2.4 データ転送パフォーマンスの微調整

ネットワークのパフォーマンスを最適にするために、マイグレーションジョブにおけるデータ転送を微調整できます。機能や設定手順の詳細は、特定のジョブに対して選択されたデータ転送方法により異なります。 『ユーザガイド』の「サポートされている転送方法」を参照してください。

2.4.1 微調整ファイルレベルおよびVSS対応のブロックレベル転送パフォーマンス

特定の環境での最適なパフォーマンスを実現するために、ネットワーク経由のデータ転送を微調整できます。たとえば、TCP接続の数を制御するか、またはパケットレベルの圧縮しきい値を設定する必要がある場合などが考えられます。

この機能は、次のデータ転送方法を使用するマイグレーションジョブでサポートされています。

  • ファイルレベル

  • Microsoft Volume Shadow Copy Service (VSS)オプションが選択されているブロックレベル

微調整は、次のディレクトリのPortability Suite Serverホスト上にある製品のproductinternal.config設定ファイルを修正することによって行われます。

..\PlateSpin Portability Suite Server\Web

次に、設定パラメータのリストを、2種類の値セット(デフォルトの値、および待ち時間の長いWAN環境で操作を最適にするのに推奨される値)とともに示します。

表 2-4 ファイルレベルのデータ転送パフォーマンスの微調整用のパラメータ

パラメータ

デフォルト値

高レイテンシWAN用

fileTransferThreadcount

ファイルベースのデータ転送用に開かれたTCP接続の数を制御します。

2

4~6 (最大)

fileTransferMinCompressionLimit

パケットレベルの圧縮のしきい値をバイトで指定します。

0

(disabled)

最大65536 (64 KB)

fileTransferCompressionThreadsCount

パケットレベルのデータ圧縮に使用されるスレッド数を制御します。圧縮機能が無効な場合には無視されます。

圧縮はCPUに依存するため、この設定は、ライブ転送時にパフォーマンス上の影響を与える可能性があります。

2

該当なし

fileTransferSendReceiveBufferSize

ファイル転送接続に関するTCP/IPのウィンドウサイズです。TCPの確認応答なしに送信されたバイト数を制御します。

値を0に設定すると、デフォルトのTCPウィンドウサイズ(8KB)が使用されます。カスタムのサイズにするには、サイズをバイトで指定します。

次の式を使用して、適切な値を決定します。

((リンク速度(Mbps)/8)*遅延(秒))*1024*1024

たとえば、10ミリ秒の遅延のある100Mbpsのリンクでは、適切なバッファサイズは次のようになります。

(100/8)*0.01 * 1024 * 1024 = 131072バイト

0 (8192バイト)

最大5242880 (5MB)

2.4.2 ブロックレベルのデータ転送パフォーマンスの微調整

特定の環境での最適なパフォーマンスを実現するために、帯域幅スロットリングおよび圧縮を実装することによって、ネットワーク経由のブロックレベルデータ転送を微調整できます。

この機能は、Microsoft Volume Shadow Copy Service (VSS)オプションなしでブロックレベルのデータ転送方法を使用するマイグレーションジョブでサポートされています。

ブロックレベルのデータ転送に関するシステムのデフォルト設定では、帯域消費量に制限がなく、転送されるデータは圧縮されません。Portability Suiteでは、帯域制限およびデータ圧縮を有効にするために、次の2つの方法を提供します。

  • システム全体: Portability Suite Serverのweb.configファイルを編集します。この方法で指定された帯域幅スロットリングおよびデータ圧縮は、ボリュームデータ全体の転送や、増分同期を含むすべてのブロックレベルのマイグレーションジョブに適用されます。

  • ワークロード別: カスタムのWindowsレジストリ(*.reg)ファイルをソースWindowsマシンのレジストリにインポートします。これにより、マイグレーションジョブ時に使用する特定のワークロード用にカスタマイズされた帯域幅スロットリングおよびデータ圧縮設定を定義できます。

どちらの方法も、ボリュームごとに帯域幅スロットリングおよびデータ圧縮を制御します。Windowsレジストリによって指定された設定は、web.configファイル内の設定よりも優先されます。いずれの方法においても、変更内容を有効にするのに再起動やその他の操作は必要ありません。

いずれかのメソッドを使用してブロックレベルのデータ転送のパフォーマンスを微調整する前に、ご使用の特定のシステム、ネットワーク、およびワークロード向けにCPU使用率およびネットワーク効率のバランスを保つのに適切な圧縮と帯域幅の値を決定します。

システム全体におけるブロックレベルのデータ転送パフォーマンスの微調整

  1. ワークロードマイグレーションジョブが進行中でないか確認します。

  2. テキストエディタを使用して、次のディレクトリにあるPortability Suite Server上にあるweb.configファイルを開きます。

    ..\PlateSpin Portability Suite Server\Web

  3. 次の行を検索します。

    <add key="BlockBasedTransferCompressionLevel" value="0" />
    <add key="BlockBasedTransferBandwidthThrottlingInKB" value="0" />
    
  4. 行を編集します。

    1. 1行目で、引用符で囲まれた圧縮レベルの値を0~9の数値に変更します(0は圧縮なし、9は最大限の圧縮)。

    2. 2行目で、引用符で囲まれた帯域制限の値をキロバイト/秒を表す数値に変更します。

      たとえば、必要な圧縮レベルが 3で、帯域幅の容量が512KB/秒でボリュームごとに転送される場合は、適切なweb.configの行は次のようになります。

      <add key="BlockBasedTransferCompressionLevel" value="3" />
      <add key="BlockBasedTransferBandwidthThrottlingInKB" value="512" />
      
  5. web.configファイルを保存します。

  6. 変更内容を有効にするには、Portability Suite Server上の次のサービスを指定された順序で再起動します。

    1. World Wide Web Publishingサービス

    2. Portability Suiteサービス

    3. PlateSpin Operations Framework Controller

ワークロードごとのブロックレベルのデータ転送パフォーマンスの微調整

  1. ブロックベースの転送コンポーネントがすでにソースマシン上にインストールされていることを確認します。

  2. 次のテキストを使用して、Windowsレジストリ(*.reg)ファイルを作成します。

    Windows Registry Editor Version 5.00
    [HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\PlateSpin\BlockBasedTransfer]
    "CompressionLevel"=dword:00000000
    "BandwidthThrottling"=dword:00000000
    
    

    「CompressionLevel」のdword値の最後の桁を0~-9の数値で置き換え(0は圧縮なし、9は最大限の圧縮)、「BandwidthThrottling」のdword値をビット/秒を表す数値(たとえば、512キロバイト/秒の場合は、00512000)で置き換えます。

    これらの値は、Portability Suite Serverのweb.configファイル内のいずれの設定よりも優先されます。

  3. Windowsレジストリエディタを使用して、*.regファイルをWindowsレジストリにインポートします。