16.7 DSTraceの使用

Linux環境でDSTraceユーティリティを使用するには、サーバプロンプトから次のコマンドを実行します。

/opt/novell/eDirectory/bin/ndstrace

ndstraceコマンドの完全な構文は次のとおりです。

ndstrace [-l|-u|-c "command1;......"|--version] [-h <local_interface:port>] [--config-file <configuration_file_path>] [thrd <thread ID>] [svty <severity_level>] [conn <connection_ID>]

DSTraceユーティリティは、次の3つの主要部分で構成されています。

16.7.1 基本機能

DSTraceの基本機能は次のとおりです。

  • eDirectoryの内部動作およびLinuxのデバッグメッセージを表示します。

  • 一部の同期処理を開始します。

DSTraceユーティリティは、UIモードまたはコマンドラインモードのいずれかで使用できます。デフォルトでは、DSTraceはUIモードで実行します。UIモードでDSTraceユーティリティを開始するには、サーバプロンプトで次のコマンドを実行します。

/opt/novell/eDirectory/bin/ndstrace

コマンドラインモードでDSTraceユーティリティを開始するには、サーバプロンプトで次のコマンドを実行します。

/opt/novell/eDirectory/bin/ndstrace -l

DSTraceの基本機能を開始するには、次の構文を使用してサーバプロンプトでコマンドを入力します。

ndstrace command_option

次の表では、入力可能なコマンドオプションのリストを示します。

オプション

説明

オン

基本トレースメッセージを含むeDirectoryトレース画面を起動します。

オフ

トレース画面を無効にします。

ALL

eDirectoryトレース画面を起動し、すべてのトレースメッセージを表示します。

AGENT

ON、BACKLINK、DSAGENT、JANITOR、RESNAME、およびVCLIENTフラグと同等のトレースメッセージを含むeDirectoryトレース画面を開始します。

DEBUG

デバッグに通常使用する定義済みのトレースメッセージのセットを有効にします。設定されるフラグは、ON、BACKLINK、ERRORS、EMU、FRAGGER、INIT、INSPECTOR、JANITOR、LIMBER、MISC、PART、RECMAN、REPAIR、SCHEMA、SKULKER、STREAMS、およびVCLIENTです。

NODEBUG

トレース画面は使用可能なままで、以前に設定したデバッギングメッセージはすべて無効にします。このオプションでは、メッセージもONのコマンドオプションが設定された状態のままになります。

16.7.2 デバッギングメッセージ

DSTrace画面が使用可能な場合、デフォルトのフィルタの設定に基づいて情報が表示されます。デフォルトで表示される情報の内容を変更するには、デバッギングメッセージフラグを使用してフィルタを操作します。デバッギングメッセージにより、eDirectoryのステータスを確認し、問題が発生していないかどうかを検証できます。

各eDirectory処理には、デバッギングメッセージのセットが含まれています。個々の処理中にそのデバッギングメッセージを表示するには、プラス記号(+)、および該当する処理名またはオプションを使用します。処理を表示しない場合は、マイナス記号(-)、および該当する処理名またはオプションを使用します。次に例を示します。

メッセージ

説明

set ndstrace = +SYNC

同期メッセージを表示します。

set ndstrace = -SYNC

同期メッセージを非表示にします。

set ndstrace = +SCHEMA

スキーマメッセージを表示します。

また、ブール演算子の& (AND)および| (OR)を使用して、デバッギングメッセージのフラグを結合することもできます。サーバコンソールでデバッギングメッセージを制御する構文は、次のとおりです。

set ndstrace = <trace_flag> [parameter]

次の表では、デバッギングメッセージ用のトレースフラグについて説明します。各トレースフラグは略語で入力できます。

トレースフラグ

説明

ABUF

eDirectory要求との連携、またはeDirectory要求への応答として受信されたデータを含む、インバウンドおよびアウトバウンドパケットバッファに関するメッセージと情報です。

ALOC

メモリ割り当ての詳細について示すメッセージです。

AREQ

他のサーバまたはクライアントからのインバウンド要求に関するメッセージです。

AUTH

認証に関するメッセージとエラーレポートです。

BASE

最小限のデバッギングレベルでのデバッグエラーメッセージ。

BLNK

バックリンクとインバウンドの破損通知メッセージおよびエラーレポートです。

CBUF

アウトバウンドDSクライアント要求に関するメッセージです。

CHNG

キャッシュ変更メッセージです。

COLL

以前に更新内容を受信したときのオブジェクトの更新情報に関するステータスおよびエラーレポートです。

CONN

ローカルサーバが接続を試みている相手のサーバ、およびローカルサーバが接続できない原因となっている可能性のあるエラーとタイムアウトについての情報を示すメッセージです。

DNS

eDirectory統合DNSサーバプロセスに関するメッセージです。

DRLK

分散リファレンスリンクメッセージです。

DVRS

eDirectoryが機能している可能性のあるDirXML®ドライバ固有のエリアを示すメッセージ。

DXML

DirXMLイベントの詳細について示すメッセージです。

FRAG

eDirectoryメッセージをNCPサイズのメッセージに分解する、NCP™ Fraggerからのメッセージ。

IN

インバウンドの要求およびプロセスに関するメッセージです。

INIT

eDirectoryの初期化に関するメッセージです。

INSP

ソースサーバのローカルデータベース内のオブジェクトの整合性に関するメッセージです。このフラグを使用すると、ソースサーバのディスクストレージシステム、メモリ、プロセッサの要求量が増加します。オブジェクトが破損しない限り、このフラグは有効に設定しないでください。

JNTR

janitor、レプリカの同期、フラットクリーナなどのバックグラウンド処理に関するメッセージです。

LDAP

LDAPサーバに関するメッセージです。

LMBR

limber処理に関するメッセージです。

LOCK

ソースサーバのローカルデータベースロックの使用および操作に関するメッセージです。

LOST

消失エントリに関するメッセージです。

MISC

eDirectory内の異なるソースからのメッセージです。

MOVE

パーティションの移動操作、またはサブツリーの移動操作からのメッセージです。

NCPE

NCPレベルの要求を受信したサーバを示すメッセージです。

NMON

iMonitorに関するメッセージです。

OBIT

破損通知処理からのメッセージです。

PART

バックグラウンド処理および要求処理からのパーティション操作に関するメッセージです。

PURG

パージ処理に関するメッセージです。

RECM

ソースサーバのデータベースの操作に関するメッセージです。

RSLV

名前解決要求の処理に関するメッセージです。

SADV

SLP (Service Location Protocol)のツリー名とパーティションの登録に関するメッセージです。

SCMA

スキーマの同期処理に関するメッセージです。

SCMD

スキーマ関連の操作の詳細について示すメッセージです。インバウンド同期とアウトバウンド同期の両方についての詳細を示します。

SKLK

レプリカの同期処理に関するメッセージです。

SPKT

eDirectory NCPサーバレベルの情報に関するメッセージです。

STRM

ストリーム構文の属性の処理に関するメッセージです。

SYDL

レプリケーション処理時の詳細について示すメッセージです。

SYNC

インバウンド同期トラフィック(サーバ側で受信される内容)についてのメッセージです。

TAGS

トレースオプションを識別するタグ文字列が表示されます。このトレースオプションでは、トレース処理で表示される各行のイベントが生成されます。

THRD

バックグラウンド処理(スレッド)の開始時と終了時を示すメッセージです。

TIME

同期処理時に使用される遷移ベクトルに関するメッセージです。

TVEC

Synchronize Up To、レプリカ、および遷移ベクトルなどの属性に関するメッセージです。

VCLN

他のサーバへの接続の確立または切断に関するメッセージです。

DSTraceでデバッギングメッセージを使用していると、特に便利なトレースフラグがあることが分かります。NetIQサポートで多く使用されているDSTrace設定には、次のようなショートカットがあります。

set ndstrace = A81164B91

この設定を使用すると、複数のデバッギングメッセージを1つのグループとして使用できます。

16.7.3 バックグラウンド処理

eDirectoryのステータスを確認できるデバッギングメッセージの他に、eDirectoryバックグラウンド処理を強制的に実行するコマンドのセットも用意されています。バックグラウンド処理を強制的に実行するには、コマンドの先頭にアスタリスク(*)を付けます。次に例を示します。

set ndstrace = *H

また、いくつかのバックグラウンド処理のステータス、タイミング、および制御を変更することもできます。これらの値を変更するには、コマンドの先頭に感嘆符(!)を付けて新しいパラメータまたは値を入力します。次に例を示します。

set ndstrace = !H 15 (parameter_value_in_minutes)

eDirectoryバックグラウンド処理を制御する各ステートメントの構文を次に示します。

set ndstrace = <trace_flag> [parameter]

次の表では、バックグラウンド処理のトレースフラグ、必要なパラメータ、およびトレースフラグが表示される処理のリストを示します。

トレースフラグ

パラメータ

説明

*A

なし

ソースサーバのアドレスキャッシュをリセットします。

*AD

なし

ソースサーバのアドレスキャッシュを無効にします。

*AE

なし

ソースサーバのアドレスキャッシュを有効にします。

*B

なし

ソースサーバ上で1秒後にバックリンク処理の実行を開始するようにスケジュールします。

!B

時刻

バックリンク処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=1500分(25時間)。範囲=2~10080分(168時間)

*CT

なし

ソースサーバのアウトバウンド接続テーブルと、テーブルの現在の統計情報を表示します。これらの統計情報には、他のサーバやクライアントからソースサーバへのインバウンド接続に関する情報は含まれていません。

*CTD

なし

コンマ区切りの形式で、ソースサーバのアウトバウンド接続テーブルと、テーブルの現在の統計情報を表示します。これらの統計情報には、他のサーバやクライアントからソースサーバへのインバウンド接続に関する情報は含まれていません。

*D

レプリカrootEntry ID

指定したローカルエントリIDをソースサーバの[すべてのオブジェクトを送信]リストから削除します。エントリIDでは、サーバのローカルデータベースで固有のパーティションルートオブジェクトを指定する必要があります。通常、このコマンドは、サーバのアクセス不能が原因でSend All Updates処理が何度試みられても失敗する場合にのみ使用します。

!D

時刻

インバウンド同期およびアウトバウンド同期の間隔を分単位で指定された値に設定します。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

!DI

時刻

インバウンド同期の間隔を分単位で指定された値に設定します。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

!DO

時刻

アウトバウンド同期の間隔を分単位で指定された値に設定します。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

*E

なし

ソースサーバのエントリキャッシュを再初期化します。

!E

なし

インバウンド同期およびアウトバウンド同期処理の実行を開始するようにスケジュールします。

!EI

なし

インバウンド同期処理の実行を開始するようにスケジュールします。

!EO

なし

アウトバウンド同期処理の実行を開始するようにスケジュールします。

*F

なし

janitor処理の一部として、フラットクリーナ処理の実行がソースサーバ上で5秒後に開始されるようにスケジュールします。

!F

時刻

フラットクリーナ処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=240分(4時間)。範囲=2~10080分(168時間)

*FL

1-10

DSTraceが使用するローリングログファイルの数を設定します。このパラメータを1より大きい値に設定した場合、ソースサーバのndstrace.logファイルが設定されている最大ファイルサイズに達すると、DSTraceはログファイルの名前をndstrace1.logに変更して、新しいndstrace.logファイルを作成します。このファイルが最大ファイルサイズに達すると、先ほどのndstrace1.logファイルがndstrace2.logに名前を変更され、それより新しいndstrace.logファイルがndstrace1.logに名前を変更されます。

この処理は、DSTraceがこのオプションによって設定されたローリングログファイルの最大数に達するまで継続します。指定された制限に達すると、一番古いログファイルが削除されて、指定された最大数のローリングログファイルのみが保持されます。

最大10個のローリングログファイルを設定できます。デフォルトでは、DSTraceはローリングログファイルを少なくとも1個使用する必要があります。このパラメータを0に設定すると、DSTraceはパラメータ値として1を使用します。

*G

レプリカrootEntry ID

指定したルートパーティションIDの変更キャッシュを再構築します。

*H

なし

ソースサーバ上で直ちににレプリカ同期処理の実行を開始するようにスケジュールします。

!H

時刻

Heatbeat同期処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=30分。範囲=2~1440分(24時間)

*HR

なし

メモリ内で最後に送信されたベクトルを消去します。

*I

レプリカrootEntry ID

指定したローカルエントリIDをソースサーバの[すべてのオブジェクトを送信]リストに追加します。エントリIDでは、サーバのローカルデータベースで固有のパーティションルートオブジェクトを指定する必要があります。レプリカの同期処理では、[すべてのオブジェクトを送信]リストがチェックされます。パーティションのルートオブジェクトのエントリIDがリスト内に存在する場合、Synchronized Up To属性の値に関係なく、eDirectoryによってパーティション内のすべてのオブジェクトと属性が同期されます。

!I

時刻

Heatbeat同期処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=30分。範囲=2~1440分(24時間)

*J

なし

レプリカの同期処理の一部として、ソースサーバ上でパージ処理の実行を開始するようにスケジュールします。

!J

時刻

janitor処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=2分。範囲=1~10080分(168時間)

*L

なし

ソースサーバ上で5秒後にlimber処理の実行を開始するようにスケジュールします。

*M

[Bytes]

ソースサーバのndstrace.logファイルで使用する最大ファイルサイズを変更します。このコマンドは、デバッグファイルの状態に関係なく使用できます。bytesの値は10000バイトと100MBの間で10進の値を指定する必要があります。この範囲外の値が指定された場合、変更は行われません。

!M

なし

eDirectoryで使用されるメモリの最大量をレポートします。

!N

0 | 1

名前の形式を設定します。

0=16進数のみ。1=full dot形式

*P

なし

調整可能なパラメータとそのデフォルトの設定を表示します。

*R

なし

ndstrace.logファイルのサイズをゼロバイトに再設定します。このコマンドは、SETパラメータのNDS Trace File Length Set to Zeroと同じ働きをします。

*S

なし

サーバ上のレプリカを同期する必要があるかどうかをチェックするスカルク処理をスケジュールします。

!SI

時刻

インバウンドスキーマ同期処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

!SO

時刻

アウトバウンドスキーマ同期処理の実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

!SIO

時刻

時間を分単位で指定し、その間のインバウンドスキーマ同期処理を無効にします。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

!SO0

時刻

時間を分単位で指定し、その間のインバウンドスキーマ同期処理を無効にします。

デフォルト=24分。範囲=2~10080分(168時間)

*SS

なし

強制的に即時スキーマの同期を実行します。

*SSA

なし

スキーマの同期処理の実行を即時に開始するようにスケジュールします。過去24時間以内に同期が行われていた場合でも、すべてのターゲットサーバでスキーマの同期が強制的に実行されます。

*SSD

なし

ソースサーバの[ターゲットスキーマ同期]リストをリセットします。このリストでは、スキーマの同期処理の実行中にソースサーバと同期する必要のあるサーバが識別されます。レプリカを保持していないサーバは、サーバオブジェクトとレプリカを保持しているサーバのターゲットリストに包含されるように要求を送信します。

*[SSL]

なし

ターゲットサーバのスキーマ同期リストを印刷します。

*ST

なし

ソースサーバ上のバックグラウンド処理のステータス情報を表示します。

*STX

なし

ソースサーバ上のバックリンク処理(外部参照)のステータス情報を表示します。

*STS

なし

ソースサーバ上のスキーマ同期処理のステータス情報を表示します。

*STO

なし

ソースサーバ上のバックリンク処理(破損通知)のステータス情報を表示します。

*STL

なし

ソースサーバ上のlimber処理のステータス情報を表示します。

!T

時刻

サーバの稼動状態のチェックの実行間隔を分単位で設定します。

デフォルト=30分。範囲=1~720分(12時間)

*U

サーバのオプションのID

コマンドにエントリIDが含まれていない場合は、以前に「down」から「up」にラベルが付加された任意のサーバのステータスを変更します。コマンドにローカルエントリIDが含まれている場合は、指定されたサーバのステータスを「down」から「up」に変更します。エントリIDは、ソースサーバのデータベースで固有であり、サーバを表すオブジェクトを参照する必要があります。

!V

リスト

制限のあるeDirectoryバージョンのリストを表示します。バージョンが表示されない場合は、制限がないことを示します。各バージョンはコンマで区切られます。

*Z

なし

現在、スケジュールされているタスクを表示します。